食品からアグリテックまで:アイルランドがいかにして3,500万人に食品を供給しているのでしょうか

食品からアグリテックまで:アイルランドがいかにして3,500万人に食品を供給しているのでしょうか

アイルランドは、農業国として有名ですが、アグリテックの分野でも傑出しており、間違いなく、その専門技術はまさにアイルランドの土地に根差すものです。

アイルランド北部のメイヨー州にあるCeide Fieldsは、世界でも珍しい遺跡であり、観光名所となっています。そこを訪れる人々は、5,000年以上前(つまり、ピラミッドが建てられる2,000年以上前)に農耕や畜産が行われていた痕跡を見ることができます。

そのような畜産農業の伝統は、200世代にわたって受け継がれ、現在のアイルランドの誇りとなっている世界トップクラスのアグリフード産業を育む土壌となっています。

アイルランド政府商務庁 イノベーション/競争力担当 Tom Kelly氏

アイルランド政府商務庁のイノベーション/競争力担当部門責任者であるTom Kelly氏は、次のように語っています。「我が国のアグリフード産業における成功は、まさに数百年に及ぶ進化の賜物です。」

「田園生活に根差した私たちの伝統が、農産物と酪農品における輸出の成果をもたらしています。」

ティペラリー州、コーク州、リムリック州に広がる「Golden Vale(黄金の谷)」と呼ばれる肥沃な放牧地から、北部のダブリン州の広大な野菜畑や、アイルランドの「Sunny South East(太陽が降り注ぐ東南部)」にあたるウェックスフォード州の果樹園まで、アイルランドの畜産農業では土地の特性が最大限に活かされています。アイルランドの世界トップクラスの競走馬を育てているのは、キルディア州の地中の石灰岩とその上に生えているカルシウムに富んだ牧草です。

アイルランドはいかにして3,500万人に食品を供給しているのでしょうか

そのような強みすべてが、アイルランドが世界有数の食品生産国としての地位を獲得するのに役立っています。「アイルランドは範囲と品質の面で非常に優れた食品供給国として世界に大きく貢献しています。人口わずか500万人の我が国がそのようにして3,500万人に食品を供給できているのです」(Tom Kelly)。

また、それはアイルランドが世界有数の乳幼児向け粉ミルク生産国として、世界供給量の10%という非常に優れた実績を収めている理由でもあります。

それだけでなく、アイルランドの長きにわたる豊かな畜産農業の伝統は世界トップクラスのアグリメック(Agri-mech)産業も生み出しています。

アイルランドには国際的な大手農機械メーカーがいくつかあります。酪農技術を専門とするDairymasterは世界中に酪農拠点を構えています。国際的な大手輸出企業としてフィードシステム技術を提供しているKeenan Systemsは、現在Alltechの傘下にあります。Alltechは、アイルランドの起業家のPearse Lyons博士によって設立された動物栄養技術企業グループであり、世界有数の巨大グループへと成長しています。

アイルランドのアグリテックイノベーション企業にはAbbey Machineryなどの国際的な輸出企業も含まれており、同社では19世紀まで遡る伝統を社内の研究開発部門が提供する最先端のイノベーションと組み合わせています。

HiSpec EngineeringProdigAgriSpreadMalone Farm MachineryTanco Autowrapといったハイテク機器メーカーが世界中で成功を収めています。これらの輸出企業の成功は、アイルランドのさまざまな気候条件に対応できる機器の製造に端を発しており、それらの機器は世界中のほぼどの地域でも十分に機能する堅牢性を備えています。

アイルランド畜産農業のサクセスストーリーの新たな幕開け

「アイルランドでは食物を生産し、食物を生産するための機器を製造しています。現在、その伝統や専門知識と新たなセンサー関連技術や無線技術が融合して、アイルランドのアグリテックがさらなる高みへと引き上げられています」(Tom Kelly)。

「今や、新しいタイプのスタートアップ企業が登場しているだけでなく、国内の歴史ある機械メーカーの新技術も広く活用されるようになってきています」(Tom Kelly)。

アグリフードからアグリメックへ、そして今やアグリテックへと展開しているアイルランドの農業畜産業物語は、Kelly氏によると「将来に対する大きな自信を与える構想の一部であり、私たちには非常に強固な基盤の上に立っている」とのことです。

アグリテック:乳牛用FitBitから畜牛用CRMまで

続々と登場するイノベーション企業にはアプリケーション開発企業が含まれており、Moo Monitorなどは乳牛用FitBit、Herdwatchなどは畜牛用CRMシステムと呼ばれています。

Keenan SystemsのIntouch Paceなどの製品やTerra NutriTECHなどの企業は、フィードシステムや水道システムにおける栄養素やミネラルのスマートモニタリングを実現しています。True North Technologiesは、芝草の成長から家畜の行動まですべてを監視するアプリを作成しています。

「アイルランドには既に非常に優れた企業が多数存在していますが、今では非常に優れた新興企業も登場しています」(Tom Kelly)

以上のようなイノベーションの大半は、農業家が本質的に起業家精神を持っており、課題に対して「為せば成る」という態度をとることが多いという事実に根差しているという説をKellyは支持しています。Ceide Fieldsから分かるように、アイルランドには農業国としての長い歴史があります。

Kellyによると、「農業家は本質的に現実的な解決策を探そうとするものです」とのことです。今日においては、それは精密農業を画期的な方法で利用して土地を最大限に活用すること、つまり、土壌へのダメージをできる限り抑えながら利益の最大化を図るテクノロジーを考案して利用することを意味します。

「現在、人類が直面している最大の課題の1つとして、いかにして人口増加に対応するためにより多くの食物を作り出すかということが挙げられます。私たちは、食物の生産量を拡大させるだけでなく、ソリューションの持続可能性に留意しながらそれを実現しなければなりません」(Tom Kelly)。

そのようなソリューションを考案する上で、アイルランドのアグリテック産業は層の厚いテクノロジー人材プールの恩恵を受けています。そのようなメリットは、ICTのグローバルハブとしてのアイルランドの現状(アイルランドには世界をリードするすべての大手IT企業の拠点があります)ならびに畜産農業とサードレベルおよびフォースレベルの教育機関との強力な共同研究開発体制によってもたらされています。

そのため、世界中に広がるアイルランド政府商務庁の拠点ネットワークは、画期的なソリューションを求めている国際的な畜産農業製品仕入れ業者の皆さんにお勧めの問い合わせ窓口となっています。

「皆さんが必要とするソリューションがアイルランドのアグリテック企業にはなくても、それらの企業は既にソリューションを生み出すために取り組んでいます。あるいは、皆さんと一緒にソリューションを生み出すことができますので、是非お問い合わせ下さい」(Tom Kelly)。

「世界が多くの課題、特に環境への影響に関連する課題に直面している時代にあって、アイルランドには、持続可能性を考慮に入れ、新たなテクノロジーをすべて活用したソリューション策を提供できる企業があります」(Tom Kelly)。

「アイルランドでは、畜産農業での伝統に基づく能力、機械産業とエレクトロニクス産業で長年にわたって蓄積された能力、先進のICTに関連する新たな能力がすべて融合しています。Dairymaster、Alltech、McHaleといった既にアイルランドで設立されている新興企業のどれを見ても、アイルランドがこの分野でリードしていると言っても過言ではないでしょう。私たちには、それを証明する証拠があります」(Tom Kelly)。

まさに畜産農業5,000年の歴史の賜物です。